この記事でわかること
・大東建託(1878)の2026年3月期決算のポイント
・建設事業の受注が減少する中で、なぜ増収増益を達成できたのか
・長期投資家目線での財務健全性・収益性・配当の評価
・今後、長期保有を検討する上で注目すべきポイントとリスク
【結論】建設事業(フロー)の受注は縮小しましたが、不動産賃貸事業(ストック)と不動産開発事業(第2の柱)が業績を牽引し、増収増益を達成しました。
対象読者:高配当・長期保有を目指す投資家の方
企業紹介
大東建託株式会社(証券コード:1878)は、1974年設立、東京都港区に本社を置く企業です。
東証プライム市場・名証プレミア市場に上場しています。
主力事業は、賃貸アパート・マンションの建築請負です。
これに加えて、一括借上(サブリース)・賃貸管理・入居者斡旋といった不動産賃貸事業、そして投資マンションや買取再販を手がける不動産開発事業を展開しています。
同社の強みは、「建築」「入居者斡旋」「管理」を自社グループで一気通貫して提供できる体制にあります。
2026年3月時点の家賃ベース入居率は、居住用で98.0%と高水準を維持しています。
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決算概要
【決算ハイライト】2026年3月期 本決算(2026年4月30日発表)
・売上高:1兆9,847億円(前期比+7.7%)
・営業利益:1,352億円(前期比+13.8%)
・当期純利益:990億円(前期比+5.5%)
・配当:期末配当82円(2025年10月の株式分割考慮後)、配当性向50.3%
・決算のポイント:営業利益・経常利益は6年ぶりの過去最高益、当期純利益は2期連続の過去最高益を更新しました。
企業理解
【今回の決算で何が起きたのか】
建設事業(フロー)の受注は縮小しましたが、不動産賃貸事業(ストック)と不動産開発事業(第2の柱)が牽引し、増収増益となりました。
【業種別考察ポイントから見た今回の決算】
・入居率:居住用98.0%(前年同月比+0.2pt)と高水準を維持
・受注:建築請負の受注工事高は前期比4.4%減の5,705億円と縮小
・不動産開発事業:売上186.5%増、営業利益259.8%増。ただしアスコット社の連結子会社化という一時要因を含む
【良かった点】
・営業利益・経常利益が6年ぶりの最高益
・当期純利益は2期連続の最高益
・入居率は計画対比でも高水準
・不動産開発事業(第2の柱)が急拡大
・期中予想(純利益950億円)に対し実績990億円とさらに上振れ
【悪かった点】
・自己資本比率が前期比1.9pt低下し36.5%
・営業キャッシュフローが前期比53%減少
・コア事業の建設事業は受注高・営業利益ともに減少
【決算の背景】
賃貸住宅着工戸数が前期比13.5%減という市場縮小の中、営業エリアを中心部へシフトしたことが受注減の一因です。一方でストック収益と不動産開発事業への多角化が業績を下支えしました。借入金増加により自己資本比率は低下しています。
【今回の決算で最も重要なポイント】
フロー(建築請負)が縮小する環境でも、ストック収益と第2の柱(不動産開発)で増収増益を達成した点です。ハイブリッド型モデルの有効性が示された一方、財務健全性の低下は今後の注視ポイントです。
総合評価
総合評価:A
財務健全性:A
収益性:A
配当・株主還元:B
【評価ポイント】
・自己資本比率はやや低下したものの、流動比率・固定長期適合率は良好で、現預金が有利子負債を上回るネットキャッシュ状態です。
・ROE20.5%、営業利益率6.8%と収益性は高水準です。
・配当性向は基準内ですが、連続増配・非減配歴はいずれも5年とまだ短い状況です。
財務健全性
【数値・評価】財務健全性 A

※出典:大東建託株式会社「2026年3月期 決算説明資料」P16
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 自己資本比率 | 36.5%(前期38.4%) |
| 流動比率 | 約219% |
| 固定長期適合率 | 約50% |
| 有利子負債 | 約2,342億円(現預金2,581億円でネットキャッシュ) |
【評価基準】(折りたたみ)
| 項目 | ◎優秀 | ○良好 | △標準 | ◇要確認 |
|---|---|---|---|---|
| 自己資本比率 | 60%以上 | 50~59.9% | 40~49.9% | 40%未満 |
| 流動比率 | 200%以上 | 150~199.9% | 100~149.9% | 100%未満 |
| 固定長期適合率 | 100%以下 | 101~120% | 121~150% | 150%超 |
| 有利子負債 | ネットキャッシュ | 返済十分可能 | ネットデットだが限定的 | 借入依存が高い |
【考察】
自己資本比率は前期比1.9pt低下し、基準の40%をやや下回りました。ただし流動比率・固定長期適合率は良好で、現預金が有利子負債を上回るネットキャッシュ状態です。
自己資本比率のみ基準をやや下回ったものの、流動比率・固定長期適合率・有利子負債の状況がいずれも優秀水準だったため、総合的にA評価としました。
長期投資家としては、短期的な安全性は確保されていると考えます。一方で、自己資本比率の低下傾向が続くかは今後注視したいポイントです。
収益性
【数値・評価】収益性 A
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| ROE | 20.5%(前期21.5%) |
| ROA(管理人試算) | 約7.2% |
| 営業利益率 | 6.8%(前期6.5%) |
| 営業CF | 405億円(前期856億円から減少) |
【評価基準】(折りたたみ)
| 項目 | ◎優秀 | ○良好 | △標準 | ◇要確認 |
|---|---|---|---|---|
| ROE | 10%以上 | 8~9.9% | 5~7.9% | 5%未満 |
| 営業利益率 | 10%以上 | 5~9.9% | 3~4.9% | 3%未満 |
| 営業CF | 毎年黒字・安定 | 概ね黒字 | 黒字だが変動あり | 赤字が目立つ |
| ROA | 5%以上 | 3~4.9% | 1~2.9% | 1%未満 |
【考察】
ROE20.5%は会社目標の20%を達成しており、収益性は高水準です。一方で営業キャッシュフローは前期比53%減少しました。
ROEと営業利益率が優秀〜良好水準にあったことに加え、営業CFの減少は一時的な要因と判断し、総合的にA評価としました。
これは販売用不動産の取得が先行したことが主因であり、直ちに懸念すべき数値ではないと考えますが、来期以降の推移は確認したいポイントです。
配当・株主還元
【数値・評価】配当・株主還元 B

※出典:大東建託株式会社「2026年3月期 決算説明資料」P36
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 配当性向 | 50.3% |
| DOE・累進配当 | 明確な方針なし(配当性向50%連動型) |
| 連続増配 | 5年(2021年3月期の減配以降) |
| 非減配歴 | 5年 |
【評価基準】(折りたたみ)
| 項目 | ◎優秀 | ○良好 | △標準 | ◇要確認 |
|---|---|---|---|---|
| 配当性向 | 30~60% | 20~29%、61~70% | 10~19%、71~80% | 10%未満または80%超 |
| DOE・累進配当 | あり | どちらか採用 | 安定配当 | 不明確 |
| 連続増配 | 10年以上 | 5~9年 | – | 実績なし・減配あり |
| 非減配歴 | 15年以上 | 10~14年 | 5~9年 | 5年未満 |
【考察】
配当性向50.3%は会社目標通りで、株主還元姿勢は明確です。
ただし2021年3月期に一度減配しており、連続増配・非減配歴はまだ5年と短い状況です。
長期の非減配実績を重視する投資家にとっては、今後の実績の積み上げを見守りたいところです。
企業の本質・注目ポイント
【管理人が注目したテーマ】
フロー×ストックのハイブリッドモデルと、第2の柱「不動産開発事業」の急拡大
【概要】
今期の営業利益164億円の増加のうち、205億円は不動産開発事業によるものです(決算説明資料P6)。
同事業の売上高は前期比186.5%増の1,470億円、営業利益は259.8%増の185億円となりました(有価証券報告書)。
この急拡大は、株式会社アスコットの連結子会社化に加え、投資マンション事業・収益不動産事業(買取再販)の伸長によるものです(決算説明資料P12)。
一方、コア事業である建設事業(フロー)は、受注工事高が前期比4.4%減の5,705億円と縮小しました。会社側は、営業エリアを3割縮小し中心部へシフトしたことを要因として説明しています(決算説明会スクリプト)。
【管理人の考察】
フロー(建築請負)が縮小する中でも、ストック収益(賃貸管理)と第2の柱(不動産開発)が業績を補い、増収増益を実現できた点は、ハイブリッド型ビジネスモデルの強みが表れた結果だと考えます。
ただし、不動産開発事業の急拡大はアスコット社の連結子会社化という一時的要因を含んでいます。この成長ペースが今後も継続するのか、一時的な押し上げ効果なのかは、来期以降の決算で見極めたいポイントです。
長期投資家としては、フロー事業の縮小をストック収益や新規事業で恒常的に補える体制になっているかを、継続して確認したいと考えます。
リスク
【現在のリスク】
・資材・人件費高騰による原価上昇(建設業種共通のリスク)
・サブリース(一括借上)における逆ざやリスク:オーナー様への借上家賃支払いが実勢賃料を上回るリスク
・空室率上昇・入居率低下リスク
・賃貸住宅市場の供給過剰・人口減少による中長期の需要縮小リスク
・自己資本比率の低下(前期比1.9pt低下し36.5%)
・営業キャッシュフローの減少(前期比53%減)
・決算短信について、2026年5月26日付で数値データの訂正が行われた事実(主要な連結業績数値自体への影響はありません)
【管理人の考察】
自己資本比率の低下や営業CFの減少は、主に不動産開発事業向けの販売用不動産取得や借入増加によるものであり、直ちに財務体質の毀損を意味するものではないと考えます。
ただし、この傾向が複数期にわたって続くようであれば注意が必要です。
サブリース事業特有の逆ざやリスクについては、今回の決算資料からは顕著な悪化を示す記載は確認できませんでした。
ただし、これは「問題が起きていない」ことの確認であり、将来にわたってリスクがないことを意味するものではありません。
長期投資家としては、フロー事業の縮小が続く中でも、ストック収益と第2の柱への多角化によって業績を維持・拡大できるかを、継続して確認していきたいと考えます。
管理人まとめ
【管理人コメント】
正直な感想として、今回の決算は「数字以上に構造の変化を感じた決算」でした。フロー(建築請負)が縮小する中でも、ストックと第2の柱がしっかり業績を補った点は、この記事で見てきた通りです。
受注減という見出しだけを見て売り時と判断するのは早計だと、今回の決算を通じて改めて感じています。
自己資本比率の低下と営業CFの減少は、この記事を書きながら一番気になった数字です。不動産開発事業向けの投資が先行した結果とはいえ、2〜3期連続で同じ傾向が続くようであれば、保有スタンスを見直す材料になり得ると考えています。
配当については、配当性向50%という明確な方針を評価しつつ、非減配実績がまだ5年と浅いことから、累進配当やDOEを重視する方には物足りなさが残るかもしれません。私自身は、配当方針の一貫性を評価し、当面は静観する方針です。
長期投資家として今、一番知りたいのは「不動産開発事業の205億円という利益貢献が、来期も再現できるのか」という点です。次回の決算では、この成長が一時的な押し上げだったのか、本物の成長だったのかを真っ先に確認したいと思います。
免責事項
※本記事は、大東建託株式会社が公開している決算資料をもとにした個人の分析です。
※内容には十分注意していますが、数値の転記・計算ミス等がある可能性があります。
※本記事は投資助言を目的としたものではなく、投資判断はご自身の判断と責任でお願いいたします。


