この記事でわかること
- IDホールディングス(4709)の2026年3月期決算の概要と、5期連続最高益の中身
- 2026年4月に実施された株式分割の内容と、配当への影響
- 2026年6月に発表された中期経営計画の上方修正のポイント
- 財務健全性・収益性・配当株主還元をロン式評価基準で客観的に分析した結果
- 長期投資家として押さえておきたいリスクと注目ポイント
企業紹介
株式会社IDホールディングス(証券コード:4709、東証プライム上場)は、情報サービス事業を手がける企業グループです。
連結子会社9社、持分法適用会社2社で構成されており、開示上は「情報サービス事業」という単一セグメントの会社です。
主力事業は以下の5領域です。
- システムマネジメント(システムの運用・保守)
- アプリケーション開発
- ITインフラ
- サイバーセキュリティ
- コンサルティング・教育
同社は官公庁・金融機関などを中心としたシステム運用・保守で安定した収益基盤を築きつつ、サイバーセキュリティやコンサルティングといった、より利益率の高い領域への事業シフトを進めています。
中期経営計画では、システムマネジメント・アプリケーション開発を「岩盤領域」、サイバーセキュリティ・コンサルティング等を「注力領域」と位置づけ、両輪での成長を目指しています。
3分で読みたい方はこちら(note)
細かい分析より、まず要点だけ知りたい方へ
この記事の内容をコンパクトにまとめたnoteも公開しています。
noteはこちら👇

決算概要
2026年3月期 本決算(2026年4月30日発表)
【決算ハイライト】

※出典:株式会社IDホールディングス「2026年3月期 決算補足説明資料」P3
- 売上高:393億71百万円(前期比+8.5%)
- 営業利益:41億28百万円(前期比+9.2%、営業利益率10.5%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益:29億07百万円(前期比+21.7%)
- 配当(年間・株式分割後換算):40円(前期35円から+5円)
決算のポイント
- 売上高・営業利益ともに5期連続で過去最高を更新(6期連続増収増益)
- 売上総利益が初めて100億円を突破(101億17百万円)
- アプリケーション開発・サイバーセキュリティ・ITインフラが業績を牽引
- 2026年4月1日付で普通株式1株→2株の株式分割を実施
- 2026年6月15日、中期経営計画の2027年3月期数値目標を上方修正
企業理解
今回の決算で何が起きたのか
IDホールディングスの2026年3月期は、増収増益に加えて「利益の中身」が改善した決算でした。
売上総利益率は25.7%となり、前期比で1.8ポイント上昇しています。
これは、単に売上が伸びただけでなく、収益性の高い事業への構成シフトが進んでいることを示しています。
業種別考察ポイントから見た今回の決算
情報・通信業では「ストック型収益の拡大」「事業の構成比の変化」「利益率の改善」が重要な着眼点です。
同社の場合、岩盤領域(システムマネジメント・アプリケーション開発)による安定収益を土台としつつ、注力領域(サイバーセキュリティ・コンサルティング等)の拡大によって利益の質が向上している点が、今回の決算の特徴といえます。
良かった点
- サイバーセキュリティが前期比+43.0%と突出した伸び
- ITインフラ(+11.3%)、アプリケーション開発(+10.4%)も2桁成長
- のれん償却額が3億84百万円→2億02百万円へ減少し、利益を押し上げ
- 有利子負債が19.5億円→10億円へ大幅圧縮
悪かった点
- コンサルティング・教育のみ前期比▲7.6%と唯一の減収(会社側から具体的な減収要因の説明は確認できませんでした)
- 純利益が21.7%増加した一方、営業キャッシュフローは35億58百万円→30億61百万円へ減少 ※法人税等の支払額が11億24百万円→18億85百万円へ増加したこと、売掛金の増加が主因です。事業拡大局面ではよくある現象ですが、「利益は伸びてもキャッシュは伸びていない」という事実として押さえておきたいポイントです
決算の背景
社会全体のデジタル化に伴うIT投資ニーズの拡大に加え、企業のサプライチェーンを狙ったサイバー攻撃の増加を背景に、セキュリティ対策への投資意欲が高まっています。
同社はこうした環境を追い風に、収益性の高い高度運用・ITインフラ領域への経営資源投入や、受注単価の見直しを進めてきました。
今回の決算で最も重要なポイント
業績が当初の会社計画(売上高385億円)を大きく上回ったことを受け、決算発表からわずか1カ月半後の6月15日に、中期経営計画の数値目標そのものを上方修正した点です。
「様子見の据え置き」ではなく、実績に応じて機動的に目標を引き上げる経営姿勢が示されました。
総合評価
総合評価 S
財務健全性 SS
収益性 SS
配当・株主還元 A
【評価ポイント】
・自己資本比率63.3%、流動比率203.9%、有利子負債はネットキャッシュと、財務健全性は全項目で最上位水準
・ROE20.2%、営業利益率10.5%、営業CFは5期連続黒字と、収益性も全項目で最上位水準
・配当性向46.6%・非減配17期は優秀だが、連続増配は5期、DOE・累進配当の明確な方針表明がないため配当・株主還元はA評価
財務健全性 SS

※出典:株式会社IDホールディングス「2026年3月期 決算補足説明資料」P10
- 自己資本比率:63.3%(前期60.3%から+3.0P)
- 流動比率:203.9%(流動資産164億10百万円/流動負債80億48百万円)
- 固定長期適合率:約47.6%(固定資産75億82百万円/(純資産152億53百万円+固定負債6億91百万円))
- 有利子負債:10億円(前期19.5億円から950百万円減少)。現金及び預金65億20百万円が有利子負債を大きく上回るネットキャッシュ
【評価基準】(折りたたみ)
| 項目 | ◎ 優秀 | ○ 良好 | △ 標準 | ◇ 要確認 |
|---|---|---|---|---|
| 自己資本比率 | 60%以上 | 50~59.9% | 40~49.9% | 40%未満 |
| 流動比率 | 200%以上 | 150~199.9% | 100~149.9% | 100%未満 |
| 固定長期適合率 | 100%以下 | 101~120% | 121~150% | 150%超 |
| 有利子負債 | ネットキャッシュ(現預金≧有利子負債) | 有利子負債はあるが営業CFや利益から十分返済可能 | ネットデットだが財務への影響は限定的 | 借入依存が高く財務リスクがある |
※本記事は管理人独自の分析評価基準に基づいて評価しています。
【考察】
自己資本比率63.3%、流動比率203.9%と、いずれも評価基準の最上位水準をクリアしています。
有利子負債は短期借入金10億円のみで、長期借入金はゼロです。
現預金65億円が有利子負債10億円を大きく上回っており、実質的な無借金経営に近い状態といえます。
長期投資家としては、財務面のダウンサイドリスクはほぼ心配のいらない水準だと考えます。
収益性 SS

※出典:株式会社IDホールディングス「機関投資家向け説明会資料」P30
- ROE(自己資本利益率):20.2%(前期18.7%から+1.5P)
- ROA(総資産利益率):約12.1%(親会社株主に帰属する当期純利益29億07百万円/総資産239億92百万円)
- 営業利益率:10.5%(前期10.4%から+0.1P)
- 営業CF:30億60百万円の黒字(前期35億57百万円から減少。過去5期連続で黒字を確保)
【評価基準】(折りたたみ)
| 項目 | ◎ 優秀 | ○ 良好 | △ 標準 | ◇ 要確認 |
|---|---|---|---|---|
| ROE | 10%以上 | 8~9.9% | 5~7.9% | 5%未満 |
| 営業利益率 | 10%以上 | 5~9.9% | 3~4.9% | 3%未満 |
| 営業CF | 毎年黒字・安定 | 概ね黒字 | 黒字だが変動あり | 赤字が目立つ |
| ROA | 5%以上 | 3~4.9% | 1~2.9% | 1%未満 |
※本記事は管理人独自の分析評価基準に基づいて評価しています。
【考察】
ROE20.2%・ROA12%台と、資本効率は非常に高い水準にあります。
過去10年間、ROEは右肩上がりで改善を続けており、一時的な好調ではなく構造的な収益力の向上が背景にあると考えられます。
一方で営業CFは前期比で4億96百万円減少しました。
これは純利益の増加に対して法人税等の支払額が大きく増えたことと、売掛金の増加によるものです。
事業拡大局面ではよく見られる動きであり、5期連続で黒字を維持している点を踏まえると、過度に心配する必要はないと考えますが、来期以降もこの傾向が続くかは継続して確認したいポイントです。
配当・株主還元 A

※出典:株式会社IDホールディングス「2026年3月期 決算補足説明資料」P12
- 配当性向:46.6%(2026年3月期)
- DOE・累進配当:明確なDOE目標・累進配当方針の開示はなし。総還元性向50~60%を目途とする方針を公式に掲げている
- 連続増配:5期連続(2022年3月期~2026年3月期、株式分割調整後ベース)
- 非減配歴:2010年3月期以降、一度も減配なし(17期連続)
【評価基準】(折りたたみ)
| 項目 | ◎ 優秀 | ○ 良好 | △ 標準 | ◇ 要確認 |
|---|---|---|---|---|
| 配当性向 | 30~60% | 20~29%、61~70% | 10~19%、71~80% | 10%未満または80%超 |
| DOE・累進配当 | DOE・累進配当あり | どちらかを採用 | 安定配当 | 配当方針が不明確 |
| 連続増配 | 10年以上 | 5~9年 | ― | 実績なし・減配あり |
| 非減配歴 | 15年以上 | 10~14年 | 5~9年 | 5年未満 |
※本記事は管理人独自の分析評価基準に基づいて評価しています。
【考察】
配当性向46.6%は、無理のない範囲で株主に利益を還元できている水準です。
非減配歴は17期に及び、リーマンショックのような厳しい経済環境下でも減配していない実績は、長期保有の安心材料になります。
一方で、DOE(純資産配当率)や累進配当方針を公式に打ち出していない点はやや物足りなさが残ります。
ただし総還元性向50~60%という数値目標を明確に掲げ、自己株式取得も含めた還元を実際に継続している点は評価できます。
参考:株価水準
- PER(株価収益率):12.54倍(予想)
- PBR(株価純資産倍率):2.48倍(実績)
- 配当利回り:4.52%(予想)
- ミックス係数(PER×PBR):約31.1
過去5年間の期末ミックス係数の推移
| 決算期末 | ミックス係数 |
|---|---|
| 2022年3月期末 | 20.46 |
| 2023年3月期末 | 18.93 |
| 2024年3月期末 | 31.60 |
| 2025年3月期末 | 29.17 |
| 2026年3月期末 | 22.74 |
| 5年平均 | 約24.6 |
ちび助の独り言
現在のミックス係数は約31.9で、過去5年平均(約24.6)と比べるとやや高い水準にあります。私自身の物差しとしては、ミックス係数が平均を大きく下回る水準まで下がってきたら購入を検討し、逆に平均を大きく上回る局面では平均近辺まで様子見するようにしています。
今はちょうど平均をやや上回るあたりなので、もう少しお得感が出ればなぁ~って見ています🐈
※ミックス係数=PER×PBR。ベンジャミン・グレアムが提唱した株価評価の目安の一つ。
※出典:IRBANK(https://irbank.net/4709/per、https://irbank.net/4709/pbr)
※株価は日々変動するため、上記は2026年7月10日終値時点のデータです。
企業の本質・注目ポイント
【管理人が注目したテーマ①:中期経営計画の上方修正と「岩盤領域」への呼称変更】
決算発表からわずか1カ月半後の2026年6月15日、同社は中期経営計画の2027年3月期数値目標を上方修正しました。
売上高410億円→420億円、営業利益44億円→45億円への引き上げです。
修正の背景として会社側は「2026年3月期の売上規模が当初の数値目標を大幅に超過した」ことを挙げています。
また、これまで「基盤領域」と呼んでいたシステムマネジメント・アプリケーション開発を「岩盤領域」と呼称変更しました。
これは、これらの事業を単なる収益の土台としてではなく、「収益力と業界優位性の源泉」として位置づけ直したことを意味します。
【管理人の考察】
決算発表後すぐに中計目標を引き上げる対応は、業績の上振れを一過性のものと捉えていない経営陣の自信の表れと考えられます。
長期投資家としては、成長領域だけでなく、安定収益基盤そのものへの経営陣の自己評価が上がった点を好感します。
今後は、この上方修正後の目標に対する進捗を四半期ごとに確認していきたいところです。
【管理人が注目したテーマ②:サイバーセキュリティ事業の急伸と利益率改善】
サイバーセキュリティの売上高は前期比+43.0%と、全サービスの中で突出した伸びを見せました。
さらに注目すべきは売上総利益率で、2024年3月期16.7%→2025年3月期28.7%→2026年3月期30.0%と、2年間で13ポイント以上改善しています。
同社は中期経営計画において、このサイバーセキュリティを含む「注力領域」の売上総利益率を2028年3月期に26.5%(岩盤領域)まで引き上げる目標を掲げています。
【管理人の考察】
サイバーセキュリティは市場全体の需要拡大という追い風に加え、同社自身の受注単価見直しや不採算案件の抑制が功を奏し、量(売上)と質(利益率)の両方が改善している点が印象的です。
長期投資家としては、この事業が「一時的なブーム」ではなく、構造的な収益ドライバーに育つかどうかを今後も注視したいと考えます。
一方で、サイバーセキュリティ市場は競合も多く、価格競争が激化すれば利益率改善のトレンドが反転するリスクもあるため、この点は継続的に確認が必要です。
リスク
- 技術革新の変化に対応できず、競争力が低下するリスク
- サイバーセキュリティ・IT分野における競争激化による収益性の低下
- システム障害・情報漏えい・サイバー攻撃による信用失墜(同社自身がセキュリティを事業とするだけに、自社の管理体制も市場から厳しく見られやすい)
- コンサルティング・教育セグメントが前期比▲7.6%の減収となっており、当該分野の立て直しが進むかは要注視
- 岩盤領域から注力領域への人材シフト(3年間累計225名の計画)が想定通り進捗するか。人材シフトが遅れれば、中期経営計画で掲げる収益構造の転換に影響する可能性がある
【管理人の考察】
情報・通信業全体に共通するリスクに加え、同社固有の注意点として、コンサルティング・教育の減収と、大規模な人材シフト計画の進捗の2点を継続的に確認していきたいと考えています。
一方で、財務健全性・収益性ともに極めて高い水準にあり、これらのリスクが顕在化しても財務基盤が揺らぐ可能性は低いと考えられます。
長期投資家としては、許容できる範囲のリスクと判断していますが、四半期ごとの決算でセグメント別の動向を追う価値はあると考えます。
管理人コメント
IDホールディングスの2026年3月期は、単なる増収増益にとどまらず、利益の質そのものが改善した決算だったと捉えています。
サイバーセキュリティの売上総利益率が2年で13ポイント以上改善したことは、価格競争に巻き込まれがちなIT業界において、同社が付加価値の高いポジションを築きつつあることの表れだと感じます。
決算発表からわずか1カ月半で中期経営計画を上方修正した経営陣の姿勢からも、業績への自信がうかがえます。
財務健全性・収益性がともにSS評価という結果は、長期で安心して保有を続けられる土台があることを裏付けていると考えます。
今後は、コンサルティング・教育の立て直しと、岩盤領域から注力領域への人材シフトの進捗を、四半期ごとに注目していきたいと思います。
この企業を一言で表すなら、「安定した岩盤の上で、高付加価値領域への進化を着実に進める情報サービス企業」です。
【免責】
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。
※内容には十分注意していますが、数値の転記・計算ミス等がある可能性があります。
※投資判断は、ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。
※本記事の内容は、記事作成時点で確認できた情報をもとに作成しており、その正確性・完全性を保証するものではありません。


