大東建託(1878)2027年3月期 第1四半期決算 動向まとめ

企業分析

※本記事は、大東建託株式会社の2027年3月期第1四半期決算(2026年7月31日発表)を踏まえた動向まとめです。
※本決算(2026年3月期)で確定した総合評価・スコアは、四半期の内容によって変更しません。今回はあくまで進捗の確認・検証を目的とした記事です。
※決算短信の数値は、公認会計士・監査法人によるレビューを受けていない速報値です。

本決算時点の評価(簡易版)

総合評価:A
財務健全性:A/収益性:A/配当・株主還元:B

※上記は2026年3月期本決算時点で確定した評価です。四半期の内容によって変更しません。

本決算の記事はこちら👇

大東建託(1878)【2026年3月期決算】建設受注は減少も、なぜ増収増益になったのか徹底解説
この記事でわかること・大東建託(1878)の2026年3月期決算のポイント・建設事業の受注が減少する中で、なぜ増収増益を達成できたのか・長期投資家目線での財務健全性・収益性・配当の評価・今後、長期保有を検討する上で注目すべきポイントとリスク…

①今回の四半期実績

【1Q実績(2026年4月〜6月)】

項目実績前年同期比
売上高4,801億円+0.4%
営業利益393億円+15.5%
経常利益398億円+13.4%
親会社株主帰属四半期純利益236億円△1.8%


画像: 第1四半期_決算説明会 P4
営業利益・経常利益が二桁増益となった一方、純利益だけが減益という結果です。
この差は、JustCo Holdings Pte. Ltd.株式に係る投資有価証券評価損42億円を特別損失に計上したことが理由で、本業の稼ぐ力そのものは落ちていません。
むしろ営業利益+15.5%は、後述する建設事業の採算改善が主因であり、実態としてはポジティブな内容だと考えます。

【通期予想(2,050,000/142,000/140,000/108,000百万円)に対する進捗率】

項目進捗率例年の1Q進捗率レンジ(IRBANK)
売上高23.4%23.7%〜24.3%
営業利益27.7%24.0%〜28.0%程度
経常利益28.4%24.8%〜27.2%
純利益21.9%

経常利益の進捗率28.4%は、過去の例年レンジ(24.8%〜27.2%)の上限をさらに上回るペースで、
単に「順調」というより、会社計画に対して上振れで推移していると評価できる水準とみてとれます。
通期業績予想・配当予想ともに修正はなく、据え置きとなっています。

画像: 第1四半期_決算説明会 P19

②セグメント別の動き

建設事業(フロー)

項目1Q実績前年同期比
完成工事高1,198億円△5.3%
完成工事総利益334億円+8.0%
総利益率27.9%+3.5pt
営業利益98億円+16.9%
営業利益率8.3%+1.6pt

完成工事高は減少していますが、総利益率が27.9%(前期24.4%)まで改善したことで、営業利益は増益となっています。
この改善の中身は、価格改定効果だけで+3.9ptを稼いでおり(前期比47億円程度のプラス効果)、労務費・資材費の上昇分△0.6ptを十分に吸収した形です。

「量」を追わず「単価」で稼ぐ方針が、数字にはっきり表れています。

画像: 第1四半期_決算説明会P7

一方、受注高は1,026億円(前年同期比△21.1%)と大きく減少しています。
理由を2つ挙げると
①前期は価格改定前の駆け込み受注が集中していた反動。
②金利上昇を受けた金融機関の融資審査長期化です、これは建設業界共通の新しい懸念材料として、次回以降も注視が必要です。
受注工事残高も7,577億円(前期末比△4.8%)と、将来の完成工事高を示す先行指標は縮小基調にあります。

なお、受注単価は1億7,046万円(前期比+1,457万円)と上昇しており、「件数は減っても単価は上がっている」実態が確認できます。
中層物件比率も26.2%(+4.7pt)まで上昇しており、単価上昇の裏付けとして評価できます。

画像: 第1四半期_決算説明会 P21


不動産賃貸事業(ストック)

項目1Q実績前年同期比
売上高3,079億円+3.9%
売上総利益396億円+11.8%
営業利益275億円+15.7%
営業利益率8.9%+0.9pt

同社の収益基盤であるストック収益は、増収・増益・増益率のすべてが揃った内容です
主因は一括借上事業収入の伸び(前期比+3.9%)で、管理戸数が1,356,363戸(前期末比+2.2%)と積み上がり続けていることが背景にあります。
入居率も居住用97.7%(前年同月比+0.3pt)と高水準を維持しており、フロー事業が減速する中でも会社全体を下支えする役割を確実に果たしています。


不動産開発事業(第2の柱)

画像: 第1四半期_決算説明会 P11

売上高は減少していますが、これは会社側の説明どおり「販売計画が第2四半期以降に偏重している」ことによる時期的な要因で、事業の失速ではありません。
営業利益+52.3%の内訳を見ると、前期に発生していた株式会社アスコット連結時の資産再評価による会計上のマイナス影響(△16億円)が今期は発生しなかったことが+16億円分を占めます。
ただし総利益率自体も23.8%(+5.6pt)へ改善しており、会計要因だけでなく実質的な採算改善も伴っている点はポジティブに評価できます。

不動産投資残高は3,101億円(前期末比+1,169億円)まで積み上がっており、中期経営計画で掲げる不動産投資額1,000億円の目標に向けて、投資が着実に進んでいることが確認できます。

7月31日には株式会社THEグローバル社(東京23区中心の開発力を持つ企業)を完全子会社化しており、来期以降の連結寄与が期待される布陣が整ってきていると感じます。


その他の事業

画像: 第1四半期_決算説明会P12

介護事業の施設利用者数増加により増収となった一方、介護施設拡大に伴う設備投資・人材採用費用の増加が利益を圧迫しました。
事業拡大に伴う先行投資という性格が強く、直ちに懸念すべき内容ではないと考えます。


③今回の動向で気になった点

今回の1Qでもっとも注目したいのは、財務体質の変化です。

2026年3月期末時点で「現預金2,581億円が有利子負債約2,342億円を上回るネットキャッシュ状態」だった同社が、1Q末(2026年6月末)には有利子負債が約3,008億円まで増加し、現預金2,500億円を上回るネットデット状態に転じました
(※この現預金2,500億円はBS〈貸借対照表〉ベースの数値です。下図はCF〈キャッシュ・フロー計算書〉ベースの「現金及び現金同等物」のため、定期預金の扱い等の違いにより金額が異なります。)

※画像:第1四半期決算説明会 P15

なぜこうなったかというと、キャッシュ・フロー計算書を見ると理由は明確です。
短期借入金が前期末比+613億円と大きく増えており、その資金使途は主に①関連会社株式の取得(THEグローバル社株式取得、△163億円)です。
なお、従業員持株ESOP信託向けの自己株式処分(収入134億円)は、資金の流出ではなく流入側の取引です。

つまり、赤字補填のための借入ではなく、成長投資・株主還元施策を計画的に実行した結果としての一時的な負債増加であり、経営の質が悪化したわけではないと判断します。
とはいえ、ネットキャッシュがA評価の一因だったことを踏まえると、この状態が2〜3期続くようであれば財務健全性の見方を調整する必要が出てきます

もう1点、純利益を押し下げたJustCo Holdings Pte. Ltd.株式の投資有価証券評価損(42億円)について、決算資料には評価損計上の背景説明が特にありませんでした。

最後に、②で見た「受注単価上昇」と「受注残高縮小」の組み合わせについて、もう一歩踏み込んで考えます。

今1Qは単価上昇(+1,457万円/件)が総利益率改善(+3.5pt)に直結し、営業利益を押し上げました。
しかし受注残高は7,577億円(前期末比△4.8%)と縮小しており、これは2Q以降の完成工事高の”仕込み”が減っていることを意味します。
つまり「単価×残高」で見たとき、単価改善が残高縮小を打ち消せるかどうかが、建設事業の来期以降の業績を左右する分岐点だと考えます
今1Qだけでは判断できず、2Q・3Qの受注動向を継続して見る必要があります。


④本決算時点の評価との整合性

財務健全性(本決算時点:A)→ 要注目
自己資本比率は35.8%(前期末36.5%から△0.7pt)とやや低下し、ネットキャッシュからネットデットへ転じました。ただし要因は前述のとおり成長投資・株主還元の計画的実行であり、赤字要因ではありません。本決算時点のA評価をすぐに見直す材料ではありませんが、次回2Q以降もこの傾向が続くかは重点的に確認したいポイントです。

収益性(本決算時点:A)→ 順調
経常利益進捗率28.4%は例年レンジの上限を超えるペースで、営業利益・経常利益ともに二桁増益です。純利益のみ特別損失の影響で減益ですが、本業の収益力という観点ではA評価と整合的、むしろ上振れ傾向にあります。

配当・株主還元(本決算時点:B)→ 変化なし
2027年3月期の配当予想(中間81円・期末82円、年間163円)は据え置きで、配当性向50%の方針にも変更はありません。本決算時点の評価をそのまま維持できる内容です。


⑤前回からの継続性

本決算記事では、「不動産開発事業の205億円という利益貢献が、来期も再現できるのか」を最大の注目点として挙げていました。

1Q実績では、不動産開発事業の売上高は299億円(前年同期比△10.6%)と減少しましたが、営業利益は42億円(同+52.3%)と大きく伸びています。

決算説明会資料には「賃貸住宅の不動産販売は1Q時点では前期並みだが、通期では大幅増加予定」との記載があり、会社側も下期偏重の計画であることを認めています。

つまり、1Q単体では「継続できるかどうか」の答えはまだ出ていません。
ただし、悪化の兆候(総利益率の低下など)も見られず、売上が減った局面でも利益率改善で利益を押し上げられている点は、事業の質という観点では前向きな材料です。

評価は「進展」と断定するには早く、「変化なし(悪化なし)」がもっとも実態に近いと考えます。次回2Qでは、下期偏重の計画通り販売が積み上がってくるかを確認したいポイントです。


⑥株価動向

【株価・指標データ】(取得日:2026年8月10日〜8月13日)

項目数値
株価3,250円(2026年8月10日終値、前日比+36円 +1.12%)
PER(予)10.2倍
PBR(実)2.21倍
配当利回り(予)4.84%
時価総額11,609億円
ROE(実)20.45%
自己資本比率36.5%

※出典:Yahoo!ファイナンス(株価)、株予報Pro(PER・PBR・配当利回り等、2026年7月31日時点データ)
※本決算時点の「参考:株価水準」セクションもあわせてご参照ください

決算発表当日(7/31)の株価は3,369円でしたが、翌営業日にかけて△3.88%下落する場面がありました。
増益決算にもかかわらず売られた背景としては、③で触れた財務体質の変化(ネットキャッシュからネットデットへの転換)や、純利益の前年同期比減益が市場に意識された可能性があります。ただしその後は切り返し、8/10時点では3,250円まで戻しています。

PER10.2倍・PBR2.21倍という水準は、同社の直近の増益基調やROE20%超の実績を踏まえると、市場評価としては割安感が意識されやすい水準です。
年初来安値は2,915.5円(6/4)まで下げた場面もあり、一時的な調整局面を経て、現状は落ち着きを取り戻しつつあると見ています。

⑦管理人まとめ

今回の1Qを見て一番感じたのは、「増益なのに、素直に喜べない要素が混ざっている」ということです。
営業利益+15.5%、経常利益+13.4%という数字だけを見れば文句なしの好決算ですが、その中身を丁寧に見ていくと、ネットキャッシュからネットデットへの転換という、本決算記事でA評価の根拠にしていた材料が変化し始めています。

とはいえ、この変化の理由がTHEグローバル社の完全子会社化や自己株式取得といった、会社が意図して実行した投資・株主還元策であることは救いです
赤字を借入で埋めているわけではなく、成長のための先行投資と読むのが自然だと考えています。

建設事業では、受注が減っても単価上昇で利益率を守れている点に、この会社の「量より質」への転換を感じました。一方で受注残高の縮小は、2Q以降の業績に効いてくる先行指標なので、ここは油断せず見ていきたいところです。

不動産開発事業については、本決算で挙げた「205億円の再現性」という問いに、1Qではまだ明確な答えは出ていません。
ただ、悪化の兆しがないことは確認できたので、通期の販売計画が下期にどう積み上がるか、次回2Qで答え合わせをしたいと思います。

この四半期を一言で表すなら、「稼ぐ力は健在、でも財務の”守り”に変化の兆し」という決算でした。


⑧参考資料・免責事項

【参考資料】
・2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年7月31日発表)
・2027年3月期 第1四半期決算説明会資料
・2026年3月期 決算発表 質疑応答(2026年5月14日発表)
・IRBANK(大東建託 四半期進捗)
・Yahoo!ファイナンス、株予報Pro(株価・株式指標)

※本記事に掲載した四半期決算数値は、公認会計士または監査法人によるレビューを受けていない速報値です。
※本記事は、大東建託株式会社が公開している決算資料をもとにした個人の分析・動向まとめです。
※内容には十分注意していますが、数値の転記・計算ミス等がある可能性があります。
※本記事は投資助言を目的としたものではなく、投資判断はご自身の判断と責任でお願いいたします。

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